プロジェクト単位でビジネスが動くサービス業では、案件ごとの工数と売上がどう紐づいているかを正確に把握することが、利益を守るうえで欠かせません。ところが、その情報がExcelや担当者の記憶に依存していることは珍しくないのです。
工数管理が属人化していると、問題は単にデータが整理されていないという話では済みません。あるメンバーの稼働が特定の案件に偏っていても、それに気づくのはプロジェクトが赤字に転落した後になりがちです。誰がどの案件にどれだけの時間を使っているかが可視化されていなければ、リソースの再配分も後手に回ります。
案件を受注した段階では利益が出る見込みだったのに、終わってみたら想定以上の工数がかかっていた ー そんな経験に心当たりのある方は少なくないはずです。問題の本質は、途中経過が見えないまま完了日を迎えてしまう構造にあります。振り返りの時点ではすでに手遅れで、同じパターンが繰り返されていきます。
中小企業庁が公表した2025年版中小企業白書によると、デジタル化に全く着手していない中小企業の割合は、2023年の30.8%から2024年には12.5%へと大きく改善しています(1)。表面上の数字だけを見れば、デジタル化は順調に進んでいるように映ります。
しかし、その中身に目を向けると景色は変わります。多くの企業が取り組んでいるのは、メールやチャットツールの導入、ペーパーレス化といった周辺業務のデジタル化です。プロジェクト別の収益管理や工数の集計といった基幹業務にまで踏み込めている企業は、まだ限られています。サービス業の労働生産性が製造業と比べて伸びにくいと繰り返し指摘される背景には、こうした「中心部分が手つかず」という構造的な問題があります(1)。
経済産業省は「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」のなかで、データ活用による付加価値向上をサプライチェーン全体の課題として位置づけています(2)。サービス業に置き換えれば、案件単位のデータを経営判断に活かせる状態にすることが、この付加価値向上の出発点になります。
プロジェクト別の収支がリアルタイムで把握できるようになると、経営の動き方そのものが変わります。赤字に傾きかけている案件を月末ではなく今週の時点で捉えられれば、人員の再配置やスコープの調整といった手を早期に打てるようになります。
こうした変化を一度に実現しようとすると、導入のハードルは高く見えるかもしれません。経済産業省のDX推進の手引きでも、最も課題が大きい業務から着手し、効果を確認しながら段階的に拡大するスモールスタートの重要性が強調されています(2)。たとえば、工数入力の仕組みを一つ整えるだけでも、全体の流れが見え始めることがあります。
参考・出典
(1)中小企業庁「2025年版 中小企業白書 第5節 デジタル化・DX」
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2025/chusho/b1_1_5.html
(2)経済産業省「中堅・中小企業等向けDX推進の手引き2025」
https://www.meti.go.jp/policy/it_policy/investment/dx-chukenchushotebiki/dx-chukenchushotebiki_2025.pdf
(3)株式会社オロ「IT企業の工数管理はなぜ重要?よくある課題と効率化の方法を解説」
https://www.oro.com/zac/blog/man-hour-management-for-it-companies/