2割特例が終わる今秋、経理の仕組みはもう整えられていますか?

作成者: Clover Plus編集部|May 31, 2026 4:23:43 PM

「今月の消費税、どう計算しますか」と聞かれて、すぐに答えられる経理担当者の方は何割いるでしょうか。特に小規模な事業者にとって、2026年10月は一つの試練になりそうです。インボイス制度の特例措置が終わり、電子帳簿保存法の運用が本格化するこの時期に、現場の経理担当者が知っておくべきことをまとめました。

2割特例が終わるとき

2023年10月のインボイス制度開始に合わせて設けられた「2割特例」は、インボイス発行事業者になった小規模事業者が消費税の納税額を売上税額の2割に抑えられる負担軽減措置です(1)。この特例が、2026年9月30日を含む課税期間をもって終了します。個人事業主であれば2026年12月31日が最後の適用期限ですが、法人の場合は事業年度によってさらに早い段階で終了することもあります。

問題はその後です。原則課税に戻れば、すべての仕入れについて仕入税額控除の計算が必要になります。受け取ったインボイスを一件ずつ確認し、適格請求書の要件を満たしているかどうかを判断し、帳簿に正しく記録する ー これらの作業量は、2割特例が適用されていた間とは比べものにならないほど増えることになります。免税事業者からの仕入れについても、2026年10月以降は仕入税額控除割合が50%に下がります。これまで「大体でよかった」消費税の計算が、細かな精度を要求されるものへと変わるわけです。

電子帳簿保存法の「本番」がやってきた

もう一つ、見落としてはならない変化があります。電子帳簿保存法における「電子取引データ保存」が完全義務化された2024年1月以降、2026年時点では税務調査において要件に沿った保存がなされているかの確認がより厳格になっています(2)。

メールで受け取ったPDFの請求書や、クラウドサービスからダウンロードした領収書を紙に印刷して保管するだけでは対応になりません。電子データのまま、真実性と可視性の要件を満たした状態で保存する必要があります。真実性の確保とは、後から改ざんされていないことを客観的に証明できる状態にすることを指します。

猶予措置として「相当の理由」があれば書面での保存も認められますが、それはシステム障害や災害などの突発的な事情が前提です。「整理が追いつかなかった」「まだシステムが整っていない」という状況が長期間許容される保証は、どこにもありません。

1人経理でも仕組みで乗り越えられるか

日本商工会議所が実施した調査によると、中小企業における経理・財務担当者が1名という企業は過半数を超えています(3)。そのような体制で、インボイスの確認・保存と電子帳簿保存法への対応を同時に行うのは、仕組みなしでは現実的に難しいでしょう。

優先順位をつけるとすれば、まず「電子取引の受け取り口を統一すること」から始めることが考えられます。取引先によってメール添付あり、クラウドストレージからのダウンロードあり、郵便あり ー この散在した受け取り方を一本化するだけで、保存漏れのリスクは大きく下がります。クラウド会計や請求書管理ツールと連携したシステムであれば、受け取りと同時に要件を満たした形での保存が自動的に完了します。

次に意識しておきたいのは、帳簿の仕訳精度です。2割特例の時代は消費税の集計を大まかに行っていた事業者も、原則課税に戻れば仕訳の時点での税区分登録が申告の正確さを左右します。後から遡って修正するよりも、日々の仕訳を正しく入力できる環境を整えておく方が、担当者の負担は長期的に見て軽くなります。

「間に合うこと」から「仕組みが動くこと」へ

制度の変化に毎回ギリギリで対応してきた経験がある方は、今回も「なんとかなる」と感じているかもしれません。ただ、2026年10月はインボイスの特例終了・電子帳簿保存法の厳格運用・消費税計算の複雑化という複数の変化が同時にやってきます。属人的な経理体制のまま乗り切ることは、以前よりリスクが高くなっています。

「正確さより間に合うことが大事な時もある」 ー それは本当です。しかし、仕組みが整っていれば「間に合うこと」と「正確さ」は両立できます。今のうちに手を入れておく価値は、十分あるはずです。

参考・出典
(1) 国税庁「2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要」 https://www.nta.go.jp/publication/pamph/shohi/kaisei/202304/01.htm
(2) 国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」 https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/index.htm
(3) 日本商工会議所「中小企業におけるインボイス制度、電子帳簿保存法、バックオフィス業務の実態調査」 https://www.jcci.or.jp/news/news/2024/0909113000.html