月末が近づくと、経理担当者の机の上には二種類の仕事が積み重なります。
ひとつは、いつも通りの締め作業。もうひとつは、今年から本格的に義務化された電子取引データの保存確認です。
2024年1月、電子帳簿保存法の改正によって電子取引データの保存が本格義務化されました。それまでの宥恕措置は2025年末をもって実質的に終了し、2026年からは「対応中」という言い訳が通じなくなっています。メールで受け取った請求書のPDFを印刷して紙のファイルに閉じる ー そのような長年の慣行は、今後は法令上の問題になり得ます(1)。
日本商工会議所の調査によれば、2025年時点で中小企業の約3割が「十分な対応ができていない」と回答しています。この数字が示しているのは、制度の難しさではなく、経理の現場が他の業務で手一杯になっている実態ではないでしょうか。
インボイス制度では、免税事業者からの仕入れに係る消費税の仕入税額控除について、開始当初3年間(2026年9月まで)は控除額の80%が認められる経過措置が設けられていました。2026年10月以降、この措置は終了します(2)。
つまり取引先が免税事業者かどうかを改めて確認し、税額計算の方法を見直す必要が生じます。経理担当者にとっては、10月以降に届く請求書の一部で処理が変わるケースが出てくるため、システムやルールの更新を事前に準備しておくことが求められます。
経理の現場では、「正確さ」が絶対の価値として語られることがあります。ただ実務の感覚として感じるのは、正確であっても間に合わなければ意味がない場面が確かにある、ということです。
月次決算で考えてみます。翌月10日、できれば翌月1週間以内に試算表を出すことが理想とされています(3)。しかし制度対応の負担が増えた状況で、締め作業と並行して電子データの整理やインボイス確認を手作業でこなしていれば、月次決算が翌月末にずれ込むのは自然な流れです。
その遅れが経営に与える影響は見えにくいですが、確実にあります。月次の数字が出るのが遅ければ、経営者が「先月はどうだったか」を把握できるのも遅くなり、問題への対応が後手に回ります。
制度対応と月次決算の両立を実現するために、経理担当者がまず考えたいのは「自分がやらなくてよいことは何か」という問いです。
電子取引データの自動保存、仕訳の自動提案、請求書受領の電子化 ー これらはすでにクラウド会計ソフトやSaaSツールで対応できます(4)。中小企業庁の「デジタル化・AI導入補助金2026」では、こうしたITツール導入費用の一部補助も受けられます(5)。
全部を一度に変えようとすると動けなくなります。まず「紙の請求書を電子受領に切り替える」「クラウド会計ソフトの自動仕訳を使い始める」という一点から着手することで、制度対応と月次早期化の両方に効いてきます。
参考・出典
(1)https://abe-legal.jp/ja/news/electronic-bookkeeping-obligation-2026
(2)https://biz.moneyforward.com/accounting/basic/82074/
(3)https://www.tkc.jp/cc/senkei/201410_special02/
(4)https://bill-one.com/knowledge/accounting-automation/
(5)https://www.chusho.meti.go.jp/koukai/hojyokin/kobo/2026/260310001.html